これまでの研究において、不安は危険や脅威と関連した認知的テーマを、抑うつは無価値、無能といった認知的テーマを有することが指摘されてきた。近年、多くの研究者は、これらの認知的テーマが注意や記憶といった情報処理過程に影響を及ぼすために、不安者や抑うつ者が中性情報よりも脅威情報を選択的に処理することを報告してきた。本研究では、不安と抑うつにおける注意バイアスや記憶バイアスを検討した研究と、それらの認知バイアスを説明する理論について展望した。その結果、不安者は注意バイアスを示しやすく、抑うつ者は記憶バイアスを示しやすい可能性が示された。また、認知行動療法に対する認知情報処理論的研究の意義と貢献の可能性について考察した。