2016 年 42 巻 2 号 p. 147-158
本研究はACTに基づく心理教育を先延ばし行動を持つ大学生に対して実施した症例報告である。成果の検討のために、先延ばししている課題の遂行状況の自己記録、GPS、AAQ-II、FFMQが用いられた。ACTの心理教育は、先延ばし行動の機能の分析と体験の回避についての学習、体験の回避を促進している言語的な関係からの脱フュージョン、体験の回避に変わる代替行動としてのマインドフルネス・エクササイズの実施、価値の明確化と価値に基づく行動の実施という四つのステップで提供された。学習会修了後、先延ばししていた課題が継続して遂行され、GPSの得点(pre: 55, post: 39, −6 points)、AAQ-II(pre: 29, post: 24, −5 points)、FFMQの得点の変化(pre: 127, post: 156, +27 points)が見られた。これらの結果について関係フレーム理論から分析を行い、先延ばし行動を持つ大学生へのACTの適用が有効であることが考えられた。初年次教育やキャリア教育への適用の可能性について議論を行った。