行動療法研究
Online ISSN : 2424-2594
Print ISSN : 0910-6529
42 巻, 2 号
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巻頭言
原著
実践研究
原著
  • 小林 和彦, 辻下 守弘
    2016 年42 巻2 号 p. 201-213
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究においては、行動分析学の視点から理論および介助の方法論を解説したパソコン上で作動する教材を開発し、介護職員3名に自己学習とセルフチェックを行ってもらい、介護老人保健施設入所者に対するベッドから車椅子への移乗介助技能への効果を、単一事例実験計画法を用いて検証した。その結果、3名とも適切な介助の頻度が増加(平均46.2%)し、彼らが日頃介助している入所者も、より少ない介助で移乗が行えるようになった。また、移乗介助指導の効果が同じ入所者の脱衣介助に反映されることも確認された。さらに、指導プログラムの内容や意義に関しても比較的良好な受け入れや評価が得られた。以上のことから、従来の指導方法によるデメリットを補完する役割を果たすことができ、本教材が介護職員指導における効果的な方法論として位置づけられる可能性が示唆されたが、対象の選択および追跡調査の問題、操作性や内容などに関する課題も残された。

  • 村井 佳比子
    2016 年42 巻2 号 p. 215-224
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は反応の変動性を低下させる場面での自己選択反応やそれ以外の選択可能な反応の提示が反応の変動性に及ぼす影響を検討することであった。対象者は大学生118名であった。対象者をそれぞれ対照群とS群(自己選択反応提示群)、E群(自己選択反応以外提示群)、A群(選択可能な全反応提示群)、O群(自己選択反応とそれ以外の一つの反応提示群)、N群(反応提示なし群)にランダムに分けた。対照群以外には反応の変動性を低下させるゲームを3回実施し、ゲームが1回終了するごとにN群以外に反応の提示を行った。その後、変動性が高いと高得点が得られる変動性測定用ゲームを実施した。その結果、S群、E群、A群には対照群と同様の高い変動性がみられたが、O群とN群は対照群よりも変動性が低くなった。臨床場面においてはクライエント自身の選択反応と選択していない反応が明確にわかる反応提示が、行動変動性を低下させないことが示唆された。

  • 高橋 恵理子, 根建 金男
    2016 年42 巻2 号 p. 225-235
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本稿では、青年期女性における身体不満足感への認知行動的介入の効果を検証するために、非無作為化試験を実施した。研究1では、認知行動的介入群において、外見に関する信念に焦点を当てて、自己の身体に対する思いやり/いつくしみを促進する実験課題を実施した。状態的な身体不満足感の得点について、外見に関する信念には焦点を当てずに身体について語る傾聴群、いずれの課題も行わない統制群と比較した。その結果、認知行動的介入群で状態的身体不満足感の得点が最も顕著に低減した。研究2では、研究1の実験課題を実際のカウンセリング場面に近づけて発展させ、認知行動的介入群でホームワークを含む4週間の介入プログラムを実施した。その結果、認知行動的介入群は傾聴群、統制群に比べて、身体不満足感などの得点がより減少する傾向にあり、主観的幸福感の得点はより増加することが示唆された。

資料
  • 伊藤 理紗, 兼子 唯, 巣山 晴菜, 佐藤 秀樹, 横山 仁史, 国里 愛彦, 鈴木 伸一
    2016 年42 巻2 号 p. 237-246
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究では、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動(以下、SB)が治療効果に及ぼす影響性の差異について検討した。ゴキブリ恐怖の大学生(N=30)を対象に、対象者を三つの介入条件のいずれか一つに割り当てた:(a)SBなし群、(b)恐怖ピーク前SB群、(c)恐怖ピーク後SB群。群と時期(エクスポージャー前・エクスポージャー直後・フォローアップ時)を独立変数、ゴキブリ恐怖に関する変数を従属変数とした分散分析の結果、すべてのゴキブリ恐怖の変数において時期の主効果が有意であった。単純主効果の検定の結果、すべての群においてエクスポージャー直後とフォローアップ時のゴキブリ恐怖は、エクスポージャー前と比較して、有意に低かった。最後に、各群のエクスポージャー中の恐怖の推移もふまえて、エクスポージャー中の恐怖のピーク前後の安全確保行動が治療効果に及ぼす影響について、考察した。

  • 山本 竜也, 首藤 祐介, 坂井 誠
    2016 年42 巻2 号 p. 247-256
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    本研究では、Reward Probability Index (RPI)日本語版を作成し、その信頼性・妥当性を検討した。研究協力者は、大学生392名(男性199名、女性191名、不明2名、平均年齢=19.61)であった。探索的因子分析の結果、RPI日本語版は、「報酬量」、「環境的抑制」、「報酬獲得スキル」の3因子、原版より1項目を削除した19項目から構成される尺度となった。RPI日本語版の内的一貫性(Cronbach’s α=.86)、および、再検査信頼性(級内相関係数=.88)は十分にあった。仮説検定では、RPI日本語版とBehavioral Activation for Depression Scale–Short FormやEnvironmental Reward Observation Scale、Beck Depression Inventory、Center for Epidemiologic Studies Depression Scaleとの相関係数は、仮説を満たしており、構成概念妥当性が確認された。したがって、RPI日本語版は報酬知覚を測定する尺度として、有用であると考えられた。

実践研究
  • 西村 勇人
    2016 年42 巻2 号 p. 257-265
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    近年、不登校の治療において機能分析に基づくアセスメントと介入が注目を浴びており、Kearneyらは不登校行動を四つの機能に大別している。本稿で報告する2事例は、不登校行動がもつ機能に注目してアセスメントを行った結果、否定的感情を喚起する学校関連刺激からの回避、社会的・評価的状況からの回避という機能を共通して持っていると想定された。これに対して共通してエクスポージャーやSSTを行い、事例1に対しては認知的介入も行った結果、学校に対する不安感が減少し、再登校が可能になった。同じ機能をもつ2事例の比較を通して、エクスポージャーやSSTの有用性についてや、どのような事例の差異に注目して技法を選択・運用していくかについて、考察を加えた。

  • 宮崎 哲治
    2016 年42 巻2 号 p. 267-277
    発行日: 2016/05/31
    公開日: 2019/04/27
    ジャーナル フリー

    患者は40歳代前半の女性。双極II型障害の大うつ病エピソードのため出勤できなくなり、やがて一人暮らしであるのに買い物に行くことさえもできず食欲も低下していったため任意入院となった。入院後約1カ月が経過してもベッドで横になったままの状態が続いていたため、薬物療法に加え行動活性化を施行した。機能分析に基づき、楽しみ、喜び、達成感が得られる活動や復職につながる活動を徐々に増やしていくことによって、大うつ病エピソードが寛解し復職が可能となった。行動活性化は行動パターンを変えることによってうつ病を改善していく技法であり、行動療法の一技法である。双極性障害に対する精神療法に関する研究は少ないが、双極性障害の大うつ病エピソードに対して、特に復職を目指している双極性障害の大うつ病エピソードの患者に対して行動活性化が有効であることが本症例により示唆された。

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