文化人類学
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原著論文
フロンティア産業景観の技術-生態誌
アマゾン植民者による所有地作製の事例から
後藤 健志
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2020 年 85 巻 2 号 p. 187-205

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抄録

ブラジル・アマゾンの植民者が営む所有地作製とは、自らが占有する土地を私有財として運用・譲渡可能な所有地へと作製すること、あるいは、その類似物へと擬製する実践である。それは植民者の間であまねく営まれ、フロンティアでの産業活動の脊柱をなす技術である。人間活動の痕跡が投影された土地被覆の領域的広がりを「景観」として捉える視座に立った場合、所有地作製の影響を幾何学図形の充溢として色濃く映し出すに至った今日のアマゾンの状況は、「フロンティア産業景観」として把握できる。さらに敷衍するなら、それは人新世的世界における地表の姿である。本論では、この景観の形成過程を技術-生態誌という方法論をもとに考察する。技術論と生態学の双方的視点からの記述が不可欠なのは、所有地作製が人為的介入を通じて連続的変化を引き起こす湿潤熱帯環境の生物物理的性質に対応し、前者の探究はその適用対象である後者との関連性の解明を必要とするからだ。事例研究としては、マト・グロッソ州北部のシングー川上流域で域外から流入した植民者が非公式に設立した入植地に注目し、彼らが所有地を基盤に農採取的資源利用、記号的人工物の生産、企業・官僚的運用といった事業を複合的に展開する過程を考察する。本論では技術-生態誌的記述を通じて、所有地作製と譲渡可能性を維持した地表の領有という表裏一体の企図が、土地の私的所有権の確立を目標に設計された行政・司法の諸制度との間に、多種多様な翻訳的関連を生み出し、フロンティア特有の産業景観が拡張していく動態を解明する。

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2020 日本文化人類学会
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