文化人類学
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原著論文
身体技法としてのボールルーム・ダンス歩行に関する人類学的研究
世界チャンピオンの「ハイブリッド型歩行」の3次元動作解析
板垣 明美西村 拓一
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2022 年 87 巻 3 号 p. 367-386

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抄録

本稿は、世界チャンピオンによるボールルーム・ダンスの指導現場の参与観察とボールルーム・ダンス歩行の3次元動作解析を統合することによって発見した新たな歩行、すなわち「ハイブリッド型歩行」について明らかにすることを目的とする。

これまで歩行は右足が出ると右半身が出るような上体と脚部の回転周期が全くずれない0度ずれの「同側型(いわゆるナンバ)歩行」と、上体と脚部が互い違いに180度ずれている「ひねり型歩行」の2項で考えられてきた。本稿で報告するボールルーム・ダンス世界チャンピオンの「ハイブリッド型歩行」は上述のいずれとも異なり、1歩の歩行の前半は「同側型」、後半は「ひねり型」が出現し、周期的には上体と足の周期が270度ずれる第3の歩行であった。

脚部と上体の回転周期のずれの型は無限の多様性がある。ボールルーム・ダンスで2人の身体が交流しながら踊ることによって、さまざまな独特な動きが創生されることを、ダンサーたちは「化学反応」と呼ぶ。ボールルーム・ダンスの指導では型よりも相手に合わせる研ぎ澄まされた身体感覚が強調され、その中で新しい身体技法が生み出される。

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2022 日本文化人類学会
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