抄録
職種や労働強度の違いが時間の経過とともに循環器検診成績に及ぼす影響を検討した。対象は富山県東部地域にあるファスナー・アルミ製造工場の従業員のうち, 1980年の年齢が35歳以上45歳未満で, 1980年と1989年の両年に循環器検診を受診し, 追跡可能であった男性538名, 女性242名である。
1980年と1989年の肥満度, 血圧, 血清総コレステロール, β-リポ蛋白, HDL-コレステロール, 中性脂肪, 尿酸, 空腹時血糖を1980年の職種と労働強度間で比較した。
1. 男性について職種間で比較すると, 1980年も1989年も尿酸値, 中性脂肪が管理・事務職群が專門技術職, 労務職に比べて高値を示した。
労働強度間で比較すると, 1980年には有意差の見られなかった尿酸値, 空腹時血糖が1989年には軽労働群が他群に比べて有意に高くなっていた。また, 総コレステロール, β-リポ蛋白も1989年には軽労働群が他群に比べて高くなっていた。一方, 肥満度は1980年には差が無かったが, 1989年には重労働群が他群に比べて高くなっていた。
2. 女性はほとんどが労務職であったため職種間の比較は行わなかった。労働強度間の比較では1980年には差が認められた項目はなかったが, 1989年には拡張期血圧が軽労働群が他群に比べて有意に高くなっていた。
以上のように, 職種間の比較では1989年に新たに差が生じた項目は無かったが, 労働強度間の比較ではいくつかの項目で新たに差が生じていた。