抄録
死亡票に基づく虚血性心疾患死亡者数を再評価する目的で, 大阪大都市圏に属する人口35万の市において, 医療記録, 警察記録の悉皆調査を行った。再評価には, 急性心筋梗塞については, WHOのMONICA共同疫学研究の診断基準を用い, 調査対象としては, 年令が25-74歳で, 死亡票に基づく原死因が, 心疾患 (ICD9版のコードで393-429) となっている1984-86年の死亡者, 及び心以外の特定の疾患 (脳卒中 (ICD430-438) の一部, 糖尿病 (250), 高脂血症 (272), 肥満 (278), 動脈・毛細血管疾患 (440-448), 不明の病態 (797-799) の1985, 86年の死亡者とした。調査対象は, 全員で409となったが, このうち397 (97%) を調査できた。死亡票に基づく虚血性心疾患死亡者数は110であったが, 調査の結果, 虚血性心疾患101, 原因不明の急死69となった。調査の結果, 原死因が心不全であった者の中に, 虚血性心疾患26, 原因不明の急死50が含まれた。仮に原因不明の急死の30%が虚血性心疾患によるものだとすれば, 虚血性心疾患による死亡者の実数は推定122となり, この数字は死亡票に基づくものの11%増しとなる。しかし, この数字でもなお, 虚血性心疾患の死亡率は, 先進国中最低水準となる。一方, 原死因が脳卒中となっていて, 調査後心疾患とされた者はほとんどいなかった。