抄録
心臓の超音波検査の学習にあたり初歩的な理解のために、心臓の解剖学的な内部構造の立体像を脳裏に刻んでおくことが必要であると感じた。そこでその立体的なイメージを表すようなイラストを描いて見ようと考えた。ところが専門医でもない著者の知識では全くの難解であった。実物を観察することも、あらゆる文献を学習することは、もとより不可能である。そこで手近に得られる、主として超音波に関する文書をひもといて、解説された平面画像から逆に立体像を帰納推定しようと試みた。はじめは作業は難航したが、 FrankH. NetterM.D.の原図Dを発見し、これが量も理解し易いものであったので、これを基とし、骨組みとして、他の文献を引用し、肉付けを行うこととした。とりわけ右心室の流出経路が難解であったが、断続的ながら、10年にして漸く、初心の著者にも納得できるイラストを描くことができた。しかし作品を改めて考察するとNetterの原図にたった一本の曲線を追加したに過ぎないものであった。それは右心室基部の上稜と前壁との境界線であった。