本稿は中国の「一帯一路」構想の政策転換とスリランカの対応を考察する.中国は途上国での批判を受け,大規模インフラ投資から「スモール・アンド・スマート」な事業へと方針を変更し,事業先の政治状況にも関与するようになった.例えば中国はスリランカ北部での小規模事業展開や文化・教育交流強化を図る一方,インド洋への軍事的進出も試みている.これに対しスリランカでは,親中政権とバランス政権の交代により一貫した対中政策が形成されず,閣僚間でも情報共有ができておらず関連する立法も遅れている。結果として中国事業の管理が適切に行われず多くのプロジェクトが「白い象」(利用価値の低い巨大施設)となっているだけでなく,中国依存から脱却できていない.インドの対応も遅く,スリランカは地域大国間のバランスを取りつつ,一帯一路から利益を得る機会を逃している状況にある.