抄録
本論文は,理不尽および理想的な責任認識指導の様相について探索的に調査するとともに,子どもの頃に体験した理不尽な責任認識指導が謝罪表現に及ぼす影響について検討したものである。まず大学生58 名に自由記述式調査を実施し,理不尽な責任認識指導の特徴として「誤解・決めつけによる叱責」等6 カテゴリー,理想的な責任認識指導の特徴として「明確な理由の提示」等8 カテゴリーを見出した。続いて理不尽な責任認識指導を体験した度合いを測定する理不尽責任認識指導尺度を作成し,謝罪表現の適切さを問う想定事例と共に,大学生112 名に回答を依頼した。その結果,理不尽責任認識指導尺度得点が高い群は,低い群に比べて,「自殺の決意」「退去の宣言」「責任の過小評価」を表明する謝罪表現への評価が有意に高く,「反省の経緯についての説明」に関する謝罪表現への評価が有意に低かった。理不尽な責任認識指導が内省を妨げる方向で個人の謝罪観に影響を及ぼす可能性について考察がなされた。