応用教育心理学研究
Online ISSN : 2436-6129
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  • 金子 智昭, 清水 優菜
    2024 年 40 巻 2 号 p. 3-22
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,保育者における達成目標志向性尺度を作成し,達成目標志向性と保育職の経験年数が保育実践力に及ぼす影響を明らかにすることである。保育者を対象に質問紙調査を行った(分析対象数283)。分析1の結果,マスタリー目標と関係性目標の2下位尺度から構成される「子どもとの相互成長目標志向性尺度」が提示された。また,パフォーマンス接近目標,パフォーマンス回避目標,仕事回避目標の3下位尺度については,外的側面の証拠が確認されず,妥当性に課題が残された。分析2の階層的重回帰分析の結果,マスタリー目標と関係性目標が保育職の経験年数にかかわらず保育実践力と正に関連することが示された。以上より,保育者の保育実践や保育職への適応を支える上で,マスタリー目標と関係性目標という動機づけを有することの重要性が示唆された。今後は,保育者の達成目標志向性に及ぼす職場環境の要因を検討することなどが課題である。
  • 龍 祐吉, 小川内 哲生
    2024 年 40 巻 2 号 p. 23-38
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は学業的満足遅延行動に及ぼす内的作業モデル,セルフコンパッション,自己効力感及び自律的動機づけの影響について検討することであった。大学生170 名(男41 名,女128 名,不明1 名)に自己報告的な質問紙を実施して回答を求めた。共分散構造分析によるパス解析の結果,内的作業モデルと学業的満足遅延との関係はセルフコンパッション,自己効力感及び自律的動機づけによって媒介されることが見出された。より詳細に言及すると,自己観がポジティブであるほど,そして他者観がポジティブであるほど,セルフコンパッション,引き続いて自己効力感並びに自律的動機づけが促されることを通じて学業的満足遅延行動が高まることが見出された。本研究の結果と先行研究の結果との整合性について言及した。また今後の課題としてモデルの説明率を高めるために失敗経験の要因と認知的方略やメタ認知的方略要因の検討の必要性,さらには精確に因果的関係を検討するためにパネル分析や実験的調査方法の必要性について言及した。
  • 山上 寛子, 相良 順子
    2024 年 40 巻 2 号 p. 39-54
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー
    青年期の若者の将来のとらえ方と心理的適応との関連が指摘されている。本研究では,中学生の将来志向性のタイプの違いによって学校適応感,ストレス感がどのように異なるのかを明らかにした。中学生848人を対象に山上・相良(2019)の将来志向性尺度を用いて調査し,中学生の将来志向性には,「将来志向性高群」「家庭志向低群」「良識家庭志向群」「良識金持志向低群」「将来志向性低群」の5つのタイプがあることが見いだされた。5タイプと学校適応感,ストレス感との関連を検討したところ,将来志向性の高い「将来志向性高群」と「良識家庭志向群」は,学校適応感が高くストレス感が低かったが,将来志向性の低い「将来志向性低群」は,ストレス感が最も高く学校適応感も最も低かった。さらに,学校適応感がストレス感に及ぼす影響を検討したところ,すべてのタイプの中学生に学習的適応のストレス感に及ぼす影響が確認されたが,特に将来への意欲や関心の最も低い「将来志向性低群」には,学習的適応がストレス緩和に大きな影響を及ぼすことが示された。
  • 森下 左知子, 葛西 真記子
    2024 年 40 巻 2 号 p. 55-72
    発行日: 2024/02/29
    公開日: 2024/04/15
    ジャーナル フリー
     日本の教師の精神的健康はここ数年の間,悪化している。本研究では,教師の精神的健康の維持には,管理職や同僚とのかかわりが影響していることを踏まえたうえで,教師が精神的健康を維持・促進するための他者とのかかわりのあり方について,より実際的な支援を提供する自己–自己対象体験の質を明細に捉える自己心理学(Kohut,1971, 1977)を用いた支援の在り方を検討することを目的とする。3名の教師に困難な状況を乗り越え成長していく過程についてのインタビュー調査を行い,質的データ分析法を用いて分析を行った。SCAT(Steps for Coding and Theorization)により,得られた結果に基づき,自己-自己対象体験の視点から,困難な状況において他者とのかかわりをどのように捉えたのかを考察し,管理職や同僚とのかかわりによる教師の精神的健康を維持するための具体的な支援と,教師の自己の健康な成長の過程について明らかにした。
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