抄録
本研究の目的は,保育者における達成目標志向性尺度を作成し,達成目標志向性と保育職の経験年数が保育実践力に及ぼす影響を明らかにすることである。保育者を対象に質問紙調査を行った(分析対象数283)。分析1の結果,マスタリー目標と関係性目標の2下位尺度から構成される「子どもとの相互成長目標志向性尺度」が提示された。また,パフォーマンス接近目標,パフォーマンス回避目標,仕事回避目標の3下位尺度については,外的側面の証拠が確認されず,妥当性に課題が残された。分析2の階層的重回帰分析の結果,マスタリー目標と関係性目標が保育職の経験年数にかかわらず保育実践力と正に関連することが示された。以上より,保育者の保育実践や保育職への適応を支える上で,マスタリー目標と関係性目標という動機づけを有することの重要性が示唆された。今後は,保育者の達成目標志向性に及ぼす職場環境の要因を検討することなどが課題である。