抄録
本研究の目的は,教師のメンタルヘルスにおけるイラショナル・ビリーフと知覚された管理職によるラインケアに関する効果の検討であった。参加者は小中学校の教師であった。研究では抑うつ症状を測定する尺度, 不合理な信念を把握する教師用のテスト,そして管理職による知覚されたサポートの程度を測定する質問紙を用いた。階層的重回帰分析の結果は,ラインケアの高さは抑うつの低さを予測していた。そして,女性の教師において,イラショナル・ビリーフが低いとき,自分に対するラインケアは抑うつを低めることが示された。本研究は,管理職によるラインケアの高さは,自分あるいは教職員全体いずれの場合においても,抑うつの低さと関係することを示唆していた。さらに,本研究ではイラショナル・ビリーフと抑うつとの関係におけるラインケアの緩衝効果を一部で確認した。