2019 年 1 巻 p. 20-26
老年臨床心理学の萌芽は,すでに我が国における老年心理学の先駆者・橘覚勝の研究にみられる。1965年に大坂市立弘済院において吉田寿三郎らと共に実践的研究として行った我が国初のデイ・ホスピタル(デイ・サービス)である。一方,2018年に第1回国家試験が実施された公認心理師への期待は,老年臨床心理学にも及んでいる。特に超高齢化の進展によって罹患の不安が広まっている認知症,高齢者世帯の増加による高齢者の孤立・孤独,そして家族を含む高齢者介護に携わる人たちへの心理的支援は,老年臨床心理学への期待の中核をなす。本稿では,橘覚勝の足跡を踏まえた上で,これらの諸点について著者の研究をベースにして議論を展開した。