抄録
吃音のある成人は心理社会的な困難をしばしば抱え,心理的介入が必要となる場合がある。一般に,エビデンスに基づく実践(EBP)は,(Ⅰ)患者・クライアントの個別性,(Ⅱ)臨床的専門性,(Ⅲ)研究のエビデンスの3つの要素からなり,エビデンスに基づく心理的実践(EBPP)には,アセスメント,効果的な治療同盟の構築,介入の実施などの広範なプロセスが含まれる。(Ⅲ)については,心理的介入(前後比較)に対するメタ・アナリシスによって,認知行動療法,及びマインドフルネスやアクセプタンスを用いた介入の効果が示されている。(Ⅰ),(Ⅱ)については,個別性を考慮した目標設定や,共感性,治療同盟,吃音治療に関する心理教育など,介入に非特異的な要因の重要性が,専門家や吃音当事者に対する調査により指摘されている。吃音のある成人に対するEBP,あるいはEBPP においても,(Ⅲ)によって実証的に支持された介入を用いるのに加え,(Ⅰ),(Ⅱ)の要素も考慮した意思決定を行う必要があるだろう。