抄録
本稿はダウン症の吃音に関して,エビデンスに基づいた実践を行うための基礎資料とするために,従来の研究を概観し,今後の課題をまとめたものである。従来の研究からダウン症は典型的な発達性吃音に比べて有症率が高く,発吃年齢が遅く,自然治癒しにくいことが示された。また,症状は典型的な発達性吃音と類似し,吃音とクラタリングの併存例と分類できる児もいることが示された。ダウン症の吃音に影響する言語的要因については,先行研究は極めて少数であり,ダウン症の吃音が言語発達と関連するという報告がみられた。吃音への感情・態度面は個人差が大きいが,予期不安や回避行動を示す児も存在していた。ダウン症の吃音への介入方法については,間接法は実施することが望ましいことが示された。ダウン症の吃音に関する研究は国内外において非常に少なく,エビデンスに基づく実践に向けて知見の蓄積が必要である。