コミュニケーション障害学
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多言語使用と認知症
田宮 聡
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ジャーナル オープンアクセス

2023 年 40 巻 3 号 p. 187-190

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抄録
西暦2000 年前後から多言語使用で生活する子どもの実行機能が注目されるようになり,バイリンガル児の実行機能は,モノリンガル児より高いという結果が示されてきた。こういう研究がきっかけとなって多言語使用と実行機能との関連全般についての関心が高まり,高齢者の認知症と多言語使用との関係も注目されるようになった。認知症発症に密接に関連する概念に,予備力がある。これは,様々な生活環境要因によって脳の認知機能に「余力」が蓄えられるという考え方であり,神経学的予備力と認知的予備力に分類される。そして,多言語使用もこの予備力を高めることによって認知症発症に影響すると考えられた。この仮説を検証するために多くの研究が行われ,特にアルツハイマー病と軽度認知障害が対象となった。多くの研究者が多言語使用と認知症との関連を検討してきたが,様々な困難が付きまとい,この問題については今も明確な結論は得られていない。
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© 2023 日本コミュニケーション障害学会
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