抄録
右大脳半球の広範な梗塞性病変により,会話時に明らかな電文体発話が認められた失文法症例(長谷川ら,1992;溝渕ら,1994)における訓練経過を報告する.訓練は,本症例の電文体発話の改善を目的に発症後11ヵ月から5年4ヵ月まで行った.最初に助詞の挿入訓練を,次に述部の省略や置換による誤りの減少を目的に述部の訓練を行った.本稿では,とくに述部の訓練について詳細に分析した.述部の訓練内容は,「動詞の活用語尾の訓練」,「助動詞の挿入訓練」,「4コマ漫画の説明文における動詞句の挿入訓練」である.これらの訓練の結果,動詞の活用と助動詞の想起・選択に改善がみられ,動詞句の挿入も改善が示唆された.