聴能言語学研究
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失語症患者の名詞と動詞の喚語能力:SLTAに基づく回復パターンの検討から
田中 美奈吉野 眞理子
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1997 年 14 巻 3 号 p. 179-186

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抄録
失語症患者の名詞と動詞の喚語能力の乖離について経時的な観点から検討した.SLTAの呼称と動作説明の成績の回復パターンを26名の失語症患者について分析した.その結果,(1)ほぼ一貫して名詞より動詞の喚語能力のほうが高い動詞優勢群5名,逆のパターンを示した名詞優勢群6名,平行回復群9名,変動群6名の4種のパターンが見いだされた.(2)動詞優勢群は全例で動詞の喚語能力が先行して回復し,また流暢型で主として側頭葉病変を有している点で先行研究と一致した.(3)名詞優勢群では全例で名詞の喚語能力が先行して回復したが,流暢型と非流暢型とに分かれ,病変部位も多様で,動作説明における誤反応にもさまざまなタイプのものがみられた.結論として,相対的に名詞の障害が強い症例には共通した特徴が多かったが,逆に動詞の障害が強い症例には共通した特徴が少なかった.動詞の喚語能力の低下にはさまざまな要因が関与することが示唆された.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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