抄録
就労や在宅生活への援助を主訴に来所する,「失語症者」の「障害」を支える要因について事例から考察した.受障後の生活を立て直すとき,受障前の家族関係(夫婦,親子,兄弟関係)や人間関係が,心理的回復過程や障害認識を大きく左右する要因となっていると筆者は考えている.これらの要因について,受障前の家族関係が円満な事例Aと家族関係が希薄な事例Bを通して具体的に検討した.また,人とのかかわりの要因のほかに,「障害者」を支える環境要因,(1)地域の福祉サービス,(2)失語症友の会(ピア,サポート)も在宅生活や就労支援を勧める上では大きな要因になっていると考えられた.