抄録
脳梗塞のためウェルニッケ失語を呈した患者の妻の手記を分析した.手記には患者の発病時,手足の麻痺がないため適切な医療を受けるのにとまどった家族のようす,言語障害に対して家族全員で取り組むようすなどが克明に描写されている.また,主治医の予後の説明に打撃を受けながらも,希望を見いだそうと揺れる気持ちなど,通常のインタビューでは表明されにくい患者家族の心理を知る一助となった.この手記より,失語症発症時の対処法を一般の人々へ普及することの重要性,発症初期から言語障害についての情報を提供し相談に応じるスタッフの必要性が考えられた.また,家族の障害受容に対して家族指導において考慮すべきことなどを考察した.