抄録
聴覚障害児の障害認識過程について,聴覚障害者が遭遇する社会的場面をビデオで提示し,それに対する応答を観察するという手法で,その様態を評価する方法について提案した.ビデオ視聴による測定法は,社会的経験に基づいた具体的な場面から障害認識の様態や他者理解の様態をつかむことができる方法であるという点で,実態把握に適した方法であると考えられた.また,上記の方法で,ろう学校・難聴学級・通常学級に在籍している聴覚障害児の障害認識段階を明らかにした.難聴学級や通常学級に在籍する聴覚障害児は,コミュニケーションが困難な場面を多く経験せざるを得ず,必然的に自分の障害を認識している状況がうかがわれた.