抄録
音韻認知過程が,能動的構音運動から変換して獲得されてきたものであることは,多数の実験で解明されている.しかしこの理論を失語症の訓練に,いかに応用するかについての研究は少ない.本研究は,8名の失語症患者にSSP電極を適用し,失った構音運動覚の回復-音韻操作能力の改善-が見られるかを調べた.さらに1症例を継時的に実験計画で追い,言語訓練として利用できるかを検討した.
結果は以下の通りである.
(1) 音韻操作を必要因子とする言語課題は,SSP適応時の方が有意に高かった.改善率が最も高かったのは伝導失語とJargon失語の患者であった.
(2) 継時実験では,改善の止まった慢性期患者の言語能力改善傾向再生が認められた.そしてSLTA総得点は実験開始時より40%上昇した.
以上から失語症訓練に,SSP電極が利用できる可能性が示唆された.