聴能言語学研究
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5 巻, 1 号
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  • 角山 富雄
    1988 年 5 巻 1 号 p. 2-15
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    〈脳性麻痺〉が言語臨床の対象となって40年あまりが経過した.当初,脳性麻痺の言語病理は発声発語器官の協調運動機能障害にあると考えられていたが,その後,考え方が脳性麻痺に固有な言語障害の特定から,脳性麻痺児に随伴する言語症状の統合化へと変化し,身体的欠損と共に成長せざるをえないことに由来する言語行動偏椅こそがその言語病理だと結論されるようになった.これは,小児神経学の考え方が発達という問題に重点を置くようになったことと呼応するのかも知れないが,言語病理に関するこのような考え方の変化は,脳性麻痺言語臨床の場に複合的評価(生理学的,記号論的,言語学的,語用論的)の必要性や言語診断,治療の在り方に関する様々な問題を投げかけている.脳性麻痺児やその母親との治療契約という問題は,その中でも,もっとも難解な現在的課題と言えよう.身体的欠損とともに生まれそれを生きている子供とその家族との間に営まれる言語生活の着地点を,言語臨床家は自らの治療不安に惑わされず統合的視野から見極め,それを子供や母親と共有するという難問に直面するからである.言語臨床家はそれに耐えられる臨床家としての成熟を求められている.
  • 成人による聴取・識別実験から
    市島 民子
    1988 年 5 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    前言語期の乳児音声における母国語の影響を調べるため,母国語の異なる日本,中国,韓国,米国の乳児の喃語を対象に,比較実験を行った.
    実験は,『成人による聴取・識別』という方法をとり,専門家,非専門家の2群の日本人成人が,同一月齢(6,8,10ヵ月)の言語比較対(日本-中国,日本-韓国,日本-米国)の中から,日本の乳児の喃語を聴取・識別した.
    この実験の全識別率(同定率)は,73.8%であったが,各条件での同定率に以下の違いを認めた.
    1) 言語間では,中国との比較で高く,韓国との比較で低い.
    2) 月齢間では,10ヵ月は両識別者群とも高く,8ヵ月は群による差がみられた.
    以上の結果より,喃語には,識別可能な言語間での相違があること.この相違は10ヵ月でより明瞭になり,母国語の影響のあることが示唆された.
  • 吉川 雅博
    1988 年 5 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    single vibratorタイプのVIBAR振動器を使用し,その機器の測定と聴覚障害児者を対象とした知覚実験を行った.物理的な特性として周波数特性と振幅を測定した結果,振動器は言語音声を振動に変換する際,その成分をほとんど変えないことがわかった.また,振動器を握ったときの周波数に対する触振動覚の感度を測定すると,約3000Hz以上の純音は知覚できないが,特に約500Hz以下の純音に対しては感度が高かった.すなわち,振動器を握った場合,主にプロソディ成分が知覚できると考えられた.
    そこで,振動器を使った言語訓練の経験のある,7歳から20歳までの聴覚障害児者8名に対して,振動器のみによることばの弁別実験を行った.日本語の音韻的特徴の一つである長音や促音の有無は,よく弁別できた(86%).また,「こんにちは」など10語の日常よく使われることばに対しては,50%程度弁別できた.振動器でも多くの言語情報が得られることが示唆された.
  • 音韻操作能力を中心に
    道関 京子, 徳田 紘一, 大木 泰子, 板本 真貴子
    1988 年 5 巻 1 号 p. 29-35
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    音韻認知過程が,能動的構音運動から変換して獲得されてきたものであることは,多数の実験で解明されている.しかしこの理論を失語症の訓練に,いかに応用するかについての研究は少ない.本研究は,8名の失語症患者にSSP電極を適用し,失った構音運動覚の回復-音韻操作能力の改善-が見られるかを調べた.さらに1症例を継時的に実験計画で追い,言語訓練として利用できるかを検討した.
    結果は以下の通りである.
    (1) 音韻操作を必要因子とする言語課題は,SSP適応時の方が有意に高かった.改善率が最も高かったのは伝導失語とJargon失語の患者であった.
    (2) 継時実験では,改善の止まった慢性期患者の言語能力改善傾向再生が認められた.そしてSLTA総得点は実験開始時より40%上昇した.
    以上から失語症訓練に,SSP電極が利用できる可能性が示唆された.
  • 吉畑 博代
    1988 年 5 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
    多発性脳梗塞により,連合型視覚失認を呈すると思われる症例の認知機能について報告した.症例は,58歳,男性.種々の知覚および認知検査結果より,線画・文字の模写や線画の異同判断は可能であり,統覚はほぼ保たれていた.聴覚・触覚モダリティーにおいては,認知障害は認められなかった.しかし,物体,線画,色彩,相貌,文字という刺激属性には関係なく,視覚モダリティーにおいては,一様に認知処理障害が認められた.また,物品使用法の動作,物品の指示,類別検査ともに困難であったため,視覚失語とは異なると思われた.よって,本症例の症状は連合型視覚失認と考えられた.
    本症例の責任病巣は,両側の後頭葉内側面と考えられる.しかし,従来考えられきた連合型視覚失認の責任病巣と比し,本症例では右後頭葉内側面の損傷がかなり小さいことが特徴である.
  • 久力 周子
    1988 年 5 巻 1 号 p. 42-43
    発行日: 1988/04/30
    公開日: 2009/11/18
    ジャーナル フリー
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