抄録
single vibratorタイプのVIBAR振動器を使用し,その機器の測定と聴覚障害児者を対象とした知覚実験を行った.物理的な特性として周波数特性と振幅を測定した結果,振動器は言語音声を振動に変換する際,その成分をほとんど変えないことがわかった.また,振動器を握ったときの周波数に対する触振動覚の感度を測定すると,約3000Hz以上の純音は知覚できないが,特に約500Hz以下の純音に対しては感度が高かった.すなわち,振動器を握った場合,主にプロソディ成分が知覚できると考えられた.
そこで,振動器を使った言語訓練の経験のある,7歳から20歳までの聴覚障害児者8名に対して,振動器のみによることばの弁別実験を行った.日本語の音韻的特徴の一つである長音や促音の有無は,よく弁別できた(86%).また,「こんにちは」など10語の日常よく使われることばに対しては,50%程度弁別できた.振動器でも多くの言語情報が得られることが示唆された.