聴能言語学研究
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フィードバックによる発声の制御の観点からみたdisfluency
府川 昭世吉田 茂
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1989 年 6 巻 2 号 p. 70-76

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抄録
遅延聴覚フィードバック(DAF)という実験的手法を用いて,発声のフィードバック制御の観点から,disfluencyの発現メカニズムを考察した.4名の健常成人は,5音から成り複雑度の異なる3種のメロディー課題を,毎秒5拍のテンポで音節/pa/で復唱した.遅延時間条件は,0-900ms(100msステップ)の10条件とした.DAF効果はサウンドスペクトログラムで分析され,それぞれのDAF条件における発声の頻度(/pa/の頻度)が数えられた.
課題が複雑になるほどdisfluencyが起きやすいということが,全ての被験者に観察された.最大のDAF効果(disfluencyが最も頻繁に起きること)は,100-300ms遅延時間条件において観察された.発声とフィードバックの関係を,サウンドスペクトログラムで分析すると,発声と同期したフィードバックが,遅延したフィードバックによって妨害を受ける時,disfluencyが誘発されることが観察された.
課題を発声する時生じるdisfluencyは,発声のフィードバックによる制御において,目標値とフィードバック値にズレを認知し反応したものと考えられる.
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© 日本コミュニケーション障害学会
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