聴能言語学研究
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〈言葉の発達が遅れた子供の評価および指導的アプローチ〉集団によるダウン症児の早期療育
石田 宏代
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1991 年 8 巻 3 号 p. 193-201

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抄録
ダウン症児に対する集団による早期療育について報告した.あわせて,同時期から同じ集団で指導を受けた4症例の認知と言語発達経過を報告し,前言語期の指導について考察した.その結果,(1)正常児が2歳頃までに獲得する前言語的行動は3歳頃までに獲得できる,(2)言語理解に比べ言語表出の発達は遅れ,個人差が大きい,(3)生活の中で言葉が出ていても要求や応答に使えず,動作表現に頼る時期が長く続く,(4)絵カードで名称が理解できるようになる前に絵のマッチングが成立している,などがわかった.これらのことから,前言語期の指導における最も重要な課題は,正常児が2歳頃までに獲得する物への注目・物の慣用的操作・物を介した人とのやり取りなどの基本的行動を段階を追ってきちんと成立させていくことであるといえるのではないだろうか.そのためには視覚的マッチングや動作表現を指導の中に積極的に位置づけるとともに,集団指導のメリットをも大いに活用していく必要があるだろうと思われる.
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