抄録
過去20余年の間に,発達障害児(者)ヘサイン言語指導の試みがなされ,その報告がされてきた.これまでその主なものは,音声言語獲得が困難な場合に,その代替手段として指導されてきた.
しかしここでは,音声言語獲得前後期のダウン症児へ,サイン言語を視覚刺激として,また音声言語への媒介モードとして使用することが,彼らの“象徴機能”“操作・探索機能”および“注意の集中持続”の発達過程に,どのように関与しているかをみた.
その結果,指導36回後,サイン言語を指導に取り入れたグループの発達過程が,コントロール群である通常指導群の場合と異なり,健常児群のそれと酷似していた.ゆえにサイン言語を,音声言語への移行モードとしての使用や,視覚刺激として頻繁に提示することが,発達障害児の“注意の集中の持続”などの改善に有効であることがわかった.