本稿では,高校生によるアートライティング(美術について体験したことを,言葉に書いて人に伝えること,またその文章)について,主に語彙・構文分析を通して明らかになった言語的特性を示し,美術教育におけるその可能性を検討した。特に本稿では,アートライティングに関するコンテストである第7回高校生アートライター大賞(2017年開催)に応募された551編のテキストデータを主な研究対象とし,形態素解析ツールを使用して高校生の文章に出現した言語形式の計量的データを算出し,実際の用例を取り上げて質的な観察と分析を行った。その結果,コンテストで高く評価されたライティングの傾向として,指示詞と体言止めの使用に特徴があり,それはこれらの表現形式の効果により生じる,体験共有への志向を示唆するものであることを指摘した。