1. テストを通じて性犯罪者にどのような特性が考えられるかについて考察するため,性犯罪者21名にロールシヤツハ・テストを始め二,三の心理学的テストを施行した。
2. 各テストの結果をみると,個々のデータではかなり顕著な性格特性や問題点があらわれていても,平均の結果では問題がはっきりしてこないという傾向がみられた。
3. そこでロールシヤツハ・テストの結果からいくつかの特性群に分類することを試み,圧縮的統制の傾向を示す群,外的統制不全の傾向を示す群,知的面に問題をもつ群が予想された。
4. 各特性群の典型に近いと思われた事例を選び,事例研究的な考察を試みた。
5. 事例Iはテスト結果において圧縮的統制の傾向がみられ,彼の行動をみると知的面能力面に問題なく,対人関係においても表面的には適応している様に見えながら,内的に不安定で情緒面にかなり問題があるようであった。事例Ⅱはテスト結果から外的刺激によって自己統制が乱れやすい傾向がみられた。生活史非行歴をみても場面の雰囲気によって行動が左右されやすい傾向が伺われ,情緒面の深刻な問題はみられなかった。このケースでは本犯が性犯罪ということはそれ自体あまり大きな意味をもたない様に思われた。事例Ⅲはテスト結果から知的面に問題が多く同時に情緒面にもかなりの問題があると思われた。このケースでは生活が全般的に乱れていて刹那的であり,性的非行もやや固着している印象を受けた。
6. ケースをふやして特性群の検討を加え,心理特性と非行内容との関連を追求して,各特性群に適切な処遇指針を求めていくことを,今後の問題にしたい。