犯罪心理学研究
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研究
性倒錯的非行について
阿部 謙一金子 靖森 武夫
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1964 年 1 巻 2 号 p. 29-37

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抄録

1. 我々の入手した範囲で,家裁で扱った14~19才の性倒錯的非行を行った,81名の少年を集計分析した。対照群がないので,従来の近接した研究との比較が行われた。同じ性的非行でも,強姦少年とは,趣を異にするようである。

2. 行為別に関しては,家族関係,経済,住居,環境,家庭問題の有無,躾の問題の有無などは関係がない。又,性的発育や,自慰の有無なども関係がない。

3. 年令は,統計的に有意ではなかったが,14・15才が半数を占め,年少には拝物,幼児わいせつが多く,年長には窃視が多い。露出やわいせつは性発逹に対応している。

動機ではわいせつ,窃視,幼児わいせつは,それ自体が目的になり易く,露出や加虐は相手を意識し,拝物は様々の衝動をもつ。

4. 少年は在学中のものが多く,交際は狭い。問診やテストの結果も,消極的,内向的な傾向が窺える。行為の始期は一年を通じて大きな偏りはない。

5. テスト結果の中では,ロールシヤツハが,内容分析その他で若千こうした非行を暗示する傾向を示している。特に内容分析の,男性象徴50%,女性象徴75%,一般解剖58%などの出現率は意味があるように見受けられる。

6. 再犯者率は23.9%である。一般には警察,裁判所の処理丈で再犯はないが,過去現在に問題行動をもつもの(再犯16人中の15名),家庭の問題か躾の問題をもつもの(再犯16人中の11名)は,粗暴的非行の再犯をしやすい。

又性格者には消極型(全39名中6名)より,積極型(全21名中9名)に再犯が多い。

精神医学的面は強調出来ないが,てんかん傾向の2例は,2例とも同種の性倒錯的非行を行った。

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© 1964 日本犯罪心理学会
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