1986 年 24 巻 2 号 p. 12-24
今回は,ロ・テストの付加法を紹介し,既に学会で発表した知見と最近整理した資料を報告し,考察に替えて,付加法に関する雑感を述べた。反省としては,年齢を区分しなかったこと,せっかく知能,非行性,人格偏倚の組合せを作りながら,統計に耐えられる人員に達せず,検討が中途半端に終わったこと,比較対象群を得ていないこと,文献的研究が不十分であったことなどが挙げられる。
ロ・テスト付加法は,個人の心の領域に深く迫ろうとする現象学的接近法の一つであり,本来は事例研究的報告がふさわしいのであるが,対象と反応内容を類別し,単純統計で処理した結果(資料)の報告に終わった。このため付加法個有の味が消えてしまったが,これは今後,主観的な解釈のミスを犯さないための客観的目安にはなると思う。幸い山ロ・後藤ら(1985)の研究により,筆者の報告に欠けた部分を補うことができ,その上,付加法の臨床的研究の方向が示されることになった。
最後に,東京少年鑑別所での共同研究者であり,付加法の臨床的活用を推し進めていただいた今村洋子専門職,並びに,福岡少年鑑別所の山ロ・後藤両専門職に対し,紙面を借りて深く謝意を表します。