犯罪心理学研究
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女子大生の犯罪情報への関心および防犯意識の形成について―リスク認知および犯罪不安の観点から―
笹竹 英穂
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2008 年 46 巻 1 号 p. 15-29

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抄録

防犯教育の視点から,女子大生の犯罪情報への関心や防犯意識の形成に関して,犯罪不安やリスク認知がどのように影響を与えているかを,被害体験の有無別に明らかにすることを本研究の目的とした。そのためにrisk as feeling model (Loewenstein, Weber, Hsee, & Welch, 2001) において用いられている行動の変数を,犯罪情報への関心や防犯意識に置き換えてモデルを構築し,このモデルの妥当性やパス係数などを被害体験の有無別に検証した。中部地方のA女子大学の2~4年生計878名に対して,平成15年4月に調査を実施した。その結果,本研究で構築されたモデルは,構造方程式モデリングの観点からは特に問題は認められなかった。結果は,被害体験の有無にかかわらず,犯罪情報への関心は防犯意識に大きな影響を与えていることが示された。また犯罪不安から犯罪情報への関心に引かれた標準化パス係数は,被害群では有意であったが,被害なし群においては有意ではなかった。さらに防犯意識に対して,リスク認知および犯罪不安が与える総合効果を調べてみると,被害なし群においてはリスク認知のほうが犯罪不安よりも総合効果が高いが,被害群においては,犯罪不安のほうがリスク認知よりも総合効果が高いことが示された。防犯教育の視点からいえば,防犯意識を高めるために,被害体験のない者に対して犯罪不安といった感情面を刺激しでもあまり効果はなく,リスク認知といった認知面を刺激することが必要であることを示唆しているものと考えられる。一方被害体験のある者に対しては,リスク認知といった認知面だけでなく,犯罪不安といった感情面も同時に刺激することが必要であることを示唆しているものと考えられる。

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© 2008 日本犯罪心理学会
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