犯罪心理学研究
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非行少年による故意に自己の健康を害する行為の意味について—行為形態の分類とパーソナリティ特性との関連性の観点から—
柿木 良太
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2012 年 49 巻 2 号 p. 25-37

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抄録

本研究は,DSH(故意に自分の健康を害する症候群)の概念を援用して,非行少年による自傷行為の意味等を解明することを目的とした。DSH行為の経験頻度を尋ねる13項目を因子分析し,不良文化因子,強迫的習癖因子,直接的自損因子及び危険事態希求因子の4因子を抽出したうえ,因子得点をクラスター分析した結果に基づいて対象者を4群に分割し,各群の因子特性,属性上の傾向等から,これらを軽度不良化群,注意獲得群,不良文化親和群及び統制不全群とした。MJPIの群別平均尺度得点を見ると,軽度不良化群と不良文化親和群はやや発散的・即行的又は防衛的な性格傾向であること,一方で注意獲得群と統制不全群は人格全体の偏りが大きく,特に神経症傾向,情緒統制の弱さ,自己顕示傾向の強さが認められた。これらを踏まえ,非行少年に特徴的な自己損傷行為は,不良文化の取り入れや,仲間への承認を求めての自己呈示,またその結果として非行性が進んでいる表れと考えられる一方,手首切傷等,狭義の自傷行為は,衝動抑制の道具的行為あるいは他者の注意・関心や愛情を獲得するための顕示的行動であることが示唆された。

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© 2012 日本犯罪心理学会
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