2007 年 32 巻 6 号 p. 833-838
現行の大腸癌取扱い規約第7版では, 下部直腸癌 (以下Rb癌) で固有筋層を越えて浸潤するものはAと表記され, 浸潤距離を測定して記載することが望ましいとされている。本稿ではRb癌の壁外浸潤距離と予後との関係を検討し, その臨床的意義を検証した。対象は根治度Aの手術を施行したRb癌で深達度pT3症例のうち, 壁外浸潤距離が測定可能であった26例である。壁外浸潤距離の測定法は第64回大腸癌研究会の募集要項に準じた。壁外浸潤距離3mm未満の症例 (n=18) は3mm以上の症例 (n=8) より無再発生存率が有意に良好であった。この壁外浸潤距離と他の臨床病理学的因子との関係はとくにみられず, さらに他の臨床病理学的因子は予後に関連しなかった。以上より, Rb癌T3症例における壁外浸潤距離は, 独立した予後規定因子となる可能性が示唆された。