日本外科系連合学会誌
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症例
大腸癌穿孔による汎発性腹膜炎術後に発見された上大静脈・左内頸静脈血栓症の1例
境 雄大
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2007 年 32 巻 6 号 p. 876-880

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抄録

患者は82歳の女性。数日間持続する下腹部痛を主訴に当科に入院した。CTで直腸壁肥厚とS状結腸近傍で腸管外への糞便の漏出を認め大腸癌の穿孔と診断, 緊急手術を行った。直腸癌口側の穿孔で大網に播種性病変も認め, 穿孔部の閉鎖と人工肛門造設術を行い, 術後に左鎖骨下静脈から中心静脈カテーテルを留置した。術後第43病日のCTで偶然, 上大静脈血栓を指摘され, 線溶療法を行ったが腫瘍からの出血で断念した。術後第51病日のCTで左内頸静脈に血栓を認めたが第121病日に退院, 第267病日に癌死したが, 経過を通じて血栓による症状はなかった。上半身深部静脈血栓症は下肢と比較して稀な疾患である。大腸癌に合併した本症の本邦報告例はStage IVの進行癌が多く, 血栓による症状, 肺梗塞の有無やリスク, 原疾患の予後, 出血傾向などを慎重に評価し, 治療方針を決定すべきと思われる。

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© 2007 日本外科系連合学会
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