抄録
症例は64歳の男性。下腹部痛と嘔吐のためイレウスの診断で緊急入院した。骨盤部造影computed tomography(CT)で骨盤内に5cm大の不整な腫瘤とそれより口側小腸の拡張を認め,回腸腫瘍が考えられた。イレウス管造影で上部小腸に異常を認めず,下部消化管内視鏡検査では腫瘍部への到達は困難であり,ダブルバルーン下部内視鏡検査を施行し,回盲弁から15cm口側の回腸に全周性狭窄を呈する潰瘍性病変を認め,生検でB細胞性悪性リンパ腫と診断した。狭窄症状の改善と化学療法による腫瘍部での腸管穿孔の回避を目的に小腸部分切除術を施行した。本症例では,通常の下部内視鏡検査で到達できなかった回腸病変に対し,ダブルバルーン下部内視鏡検査による生検で術前に悪性リンパ腫の確定診断を得た。生検と造影検査を同時に施行できるダブルバルーン内視鏡検査は本症例のような小腸腫瘍の診断上非常に有用であると考えられる。