2009 年 34 巻 4 号 p. 669-673
症例は36歳,女性.下腹部腫瘤触知,同部位の疼痛を主訴に当院を受診した.下腹部の帝王切開術瘢痕部に約2.5cm大の圧痛を伴う腫瘤を認めた.Schloffer腫瘤,腹壁子宮内膜症を疑い,切除術を行った.病理組織検査で子宮内膜に類似した間質細胞に富む間質内に,1層円柱上皮からなる管腔構造を認め子宮内膜症と診断した.腹壁子宮内膜症は皮膚子宮内膜症に分類され,比較的稀な疾患である.婦人科系手術の瘢痕部腫瘤においては本疾患を念頭におき,充分な切除を行うことが肝要である.