日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
症例報告
右側大動脈弓を伴った左肺癌の1例
境 雄大
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 35 巻 2 号 p. 139-143

詳細
抄録

 症例は59歳,女性.健診の胸部X線検査で左肺野に異常陰影を指摘された.近医での胸部CT検査で左肺上葉舌区に約4cmの腫瘤を,同時に右側大動脈弓を指摘された.擦過細胞診でclass V(腺癌)と診断され,当科に入院した.諸検査を施行し,左肺癌(cT2N1M0, cStage IIB)と診断し,手術を行った.開胸すると胸膜播種を伴う進行肺癌で,左上葉切除・下葉部分切除術と縦隔リンパ節のサンプリングを行った.肺動静脈,気管支の分岐に異常はなかった.腫瘍径は最大径42mm,病理組織学的に低分化腺癌で,最終診断はpT4N2M0, StageIIIBであった.術後経過は良好で,術後第12病日に退院した.現在,術後5カ月を経過し,化学療法を施行中であるが,腫瘍の進行を認めていない.右側大動脈弓を伴う肺癌の手術では,肺動静脈,気管支の分岐異常はなく,通常と同様に肺葉切除が可能である.文献的に左反回神経の反回部位は動脈管索が多く,縦隔リンパ節郭清時には注意を要する.

著者関連情報
© 2010 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top