2011 年 36 巻 6 号 p. 1009-1014
われわれは,稀である腎盂癌小腸転移の1例を経験した.症例は63歳,男性.58歳時,左腎盂癌に対し,手術と術後補助化学療法を行った.術後4年目に,左副腎と傍大動脈リンパ節に転移をきたし,化学療法を行いSDが得られていた.術後5年目,イレウスのため入院となり,精査の結果,小腸に狭窄を認めた.生検結果は低分化腺癌であり,原発性小腸癌の診断にて,手術を施行した.切除した小腸狭窄部と5年前に切除した腎盂癌の組織を比較すると,ともに未分化腺癌様であり,免疫染色の結果も類似していたため,小腸狭窄部は最終的に腎盂癌小腸転移と診断された.腎盂癌小腸転移の報告は,本症例が初である.