日本外科系連合学会誌
Online ISSN : 1882-9112
Print ISSN : 0385-7883
ISSN-L : 0385-7883
症例報告
ベバシズマブ以外の分子標的薬投与中に発症したストーマ周囲腸管穿孔の2例
明石 諭山田 行重杉森 志穂島田 啓司吉川 高志
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 37 巻 4 号 p. 832-837

詳細
抄録

 ベバシズマブ以外の分子標的薬投与中にストーマ周囲腸管穿孔を発症し,その関与が疑われた2例を経験したので報告する.
 
1例目は68歳男性で,肺癌に対してゲフィチニブ投与中にS状結腸憩室穿孔にて人工肛門を造設したが,術後早期と術後半年後に発症した.2例目は48歳女性で,直腸癌のMiles手術後に同時性肺転移に対して手術と化学療法を行った後の肺転移再発に,セツキシマブを投与中であった.
 
分子標的薬は悪性腫瘍に対する治療成績の向上に寄与する一方で,特有の有害事象が報告されている.消化管穿孔もその一つで,ベバシズマブによる有害事象としてよく知られている.穿孔の発症機序については明らかでないが,血管新生阻害,血栓形成,創傷治癒障害などが関与している可能性がある.ベバシズマブ以外の分子標的薬でも,これらのシグナル伝達を阻害する薬剤を使用する際には,消化管穿孔に注意を払う必要があると思われた.

著者関連情報
© 2012 日本外科系連合学会
前の記事 次の記事
feedback
Top