2013 年 38 巻 2 号 p. 350-355
症例は55歳男性.下痢,下血を主訴として2009年9月に近医を受診,直腸癌が強く疑われたため精査加療目的で当科に入院した.中下部直腸癌と診断し,10月に低位前方切除術,双孔式回腸人工肛門造設術を施行した.その際,プリーツドレーンを挿入し先端を吻合部近傍に留置した.縫合不全を併発したが,保存的治療で緩解した.術後22日目,ドレーンの抜去直後に同部位から大量の出血を認めたため,選択的血管造影を施行した.造影剤の漏出が疑われた右下臀動脈および右内陰部動脈の分枝にコイル塞栓術を行った.術後32日目にドレーン挿入部から再出血を認めた.CT血管造影で左外腸骨動脈瘤の形成を認め破裂による再出血と診断し,動脈瘤の切除と単閉鎖を行った.その後の経過は良好で術後54日目に退院した.直腸癌術後の合併症として,ドレーンの圧迫によると思われる外腸骨動脈瘤の形成および破裂は非常に稀であるので報告する.