2013 年 38 巻 5 号 p. 1072-1076
大腸癌術後4年目に異時性孤立性脾転移を認めた1例を経験した.症例は75歳の男性で,下行結腸癌とそれに伴う閉塞性イレウスに対して,下行結腸切除術(D2)を施行した.Stage Ⅲaであったため,LV/5-FUによる術後補助化学療法を6クール施行し,以後外来にて経過観察していた.術後4年目の血液検査にてCEAの上昇を認め,腹部造影CTにて脾臓に低濃度の占居性病変を認めた.他に転移・再発を疑う所見はなく,上部および下部内視鏡検査を施行したが,原発巣となるような異常を認めなかったため,大腸癌の異時性孤立性脾転移と診断し開腹下で脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検査所見は腺癌で,下行結腸癌の転移に矛盾しない所見であった.現在脾摘術後4年8カ月経過したが,再発を疑う所見は認めていない.大腸癌の他臓器への転移を伴わない孤立性脾臓転移は比較的稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.