抄録
静脈血栓塞栓症(VTE)は,致死的な経過をとる可能性がある重大な術後合併症の一つである.われわれは,胃癌または大腸癌開腹手術を行った32例を間欠的空気圧迫装置(IPC)群とエノキサパリンナトリウム追加(E)群に無作為に割り付け,術後のVTE予防におけるEの臨床使用実態下での有効性・安全性の検討を行った.その結果,DVTはIPC群で21例中4例に認めたが,E群11例では認めなかった.Dダイマーは術後7日目以降,IPC群に比しE群が有意に低値であった.有害事象は両群ともに認められなかった.DVTと下肢動脈血流速度の関連が検討可能であった18例において,DVT発症6例(術前発症2例を含む)は非発症12例に比べ左右の下肢動脈血流速度差が大きかった.EはIPCに比し術後のVTE予防に有用であり,左右の下肢動脈血流速度差がVTE発症の新たな予測因子となる可能性が示唆された.