2014 年 39 巻 2 号 p. 302-307
今回われわれは,腎細胞癌術後膵転移の2例を経験したので報告する.症例1は76歳,男性で,2000年に左腎細胞癌の診断で左腎摘出術を受けている.2009年のCT検査で膵体尾部に47×38mmの濃染する腫瘤を認め,腎癌の既往歴から膵転移を疑い膵体尾部切除術兼脾摘出術を施行した.症例2は70歳,女性で,2003年に左腎細胞癌の診断で左腎摘出術を受けている.2010年のCT検査で膵体尾部に100×60mmの濃染する腫瘤と胃壁への浸潤を認め,症例1と同様に膵転移の診断で膵体尾部切除術兼脾摘出術,胃部分切除術を施行した.病理組織学的所見では2症例とも腎細胞癌(renal cell carcinoma)の膵転移と診断された.腎細胞癌は高率に再発するため,腫瘍の再発速度を考慮し,新病変が出現しなければ早期に手術に踏み切ることにより予後の改善が得られる可能性がある.そのためにも,腎細胞癌の特徴的な生物学的悪性度を熟知し,長期的な経過観察が必要と考えられた.