抄録
症例は53歳女性,既往に右乳癌.食欲不振や嘔吐の精査にて十二指腸狭窄と高アミラーゼ血症を認め,急性膵炎の治療でいったんは改善したが,数カ月後にイレウスが再燃し試験開腹術を施行した.後腹膜に広範囲な硬化を認め,生検にて浸潤性小葉癌(Invasive lobular carcinoma:ILC)の再発と診断された.胃空腸バイパス術にて経口摂取が可能となったことから経口ホルモン薬投与を開始にて著明に奏効し,再発後5年間の無増悪期間を得た.乳癌特殊型の一つであるILCはその特殊な転移形式として腹膜・後腹膜,子宮,卵巣,消化管に転移することもあり,晩期再発が多い傾向にあることが報告されている.一方でホルモン受容体陽性率が高いことからホルモン療法が有効である場合が多く,再発時にも外科切除を含めた生検の機会があれば積極的に行うことが推奨された.ILCの予後や治療反応性につき,若干の文献的考察を加え報告する.