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二渡 信江, 小野里 航, 高橋 禎人, 西 八嗣
2015 年 40 巻 1 号 p.
25-29
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は,66歳,男性.黒色便,胸やけ,つかえ感を自覚した.貧血を認めたため,精査施行し,食道癌MtのType2,Ltの0-Ⅱc,cT3N0M0 cStage Ⅱと診断された.FP療法2コース施行後,右開胸食道亜全摘,3領域リンパ節郭清,胸骨後胃管再建,腸瘻造設術を施行した.術後7日目に縫合不全を認め,頸部創を開放した.術後2カ月経過しても軽快しないため,術後74日目に内視鏡を施行したところ,吻合部は閉塞していた.造影CT検査では,吻合部肛門側の胃管が約3cm造影されず,胃管虚血と診断した.術後106日目,胸骨縦切開,食道胃管再吻合術を施行した.食道1.0cm,胃管2.5cmの切除で再吻合が可能であった.術後経過は良好であった.
食道癌術後胃管虚血による縫合不全で胃管が閉塞した症例に対し,胸骨縦切開にて食道胃管再吻合術を施行できた1例を経験したので報告する.
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長尾 さやか, 長尾 二郎, 斉田 芳久, 中村 陽一, 榎本 俊行, 片桐 美和, 高林 一浩, 大辻 絢子, 草地 信也
2015 年 40 巻 1 号 p.
30-34
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
胃癌術後Roux-Y再建のY吻合部出血に対し保存的加療を試みたが改善せず,通常の内視鏡検査では出血点が不明であり,出血部位の同定に消化管出血シンチグラフィーが有用であった症例を経験した.症例は60歳男性,2010年1月胃癌に対し胃全摘術,Roux-Y再建,D2郭清を施行した.第11病日に退院し第20病日より外食をするようになると同時にふらつきとタール便が出現,消化管出血を疑い第25病日再入院となる.上部・下部消化管内視鏡検査にて明らかな出血源なく,入院4日目より食事(全粥食)開始した.入院6日目,朝食後に大量の新鮮血吐下血認め意識消失,消化管シンチグラフィーにて吻合部出血が疑われたため再度上部消化管内視鏡検査施行し空腸-空腸吻合部に出血点を確認し止血を施行した.
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石井 智, 細田 桂, 片田 夏也, 森谷 宏光, 山下 継史, 三重野 浩朗, 仲田 典広, 菊池 史郎, 渡邊 昌彦
2015 年 40 巻 1 号 p.
35-43
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は71歳,男性.嚥下困難を主訴に近医を受診し,食道浸潤胃癌の診断で当院を紹介された.胃癌,UE,Less,type2,por+tub2,cT4b(横隔膜),cN3,cH0,cP0,cM1(LYM),cStage Ⅳであり,HER2強陽性(IHC3+)であったため,Capecitabine+Cisplatin+Trastuzumab併用療法を選択した.6サイクル終了後,原発巣,リンパ節の著名な縮小を認め,PRと判定した.大動脈周囲リンパ節転移は消失し,根治切除可能と判断し,胃全摘術+所属リンパ節D2(-No.10)郭清術を施行した.病理組織学的所見は,Type5,tub2,ypT2(MP),ly0,v0,ypN0,ypStage IB,Therapeutic effect:Grade 2であった.Trastuzumab併用化学療法が奏効し,根治切除が可能となった症例を経験したため報告する.
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高田 譲二
2015 年 40 巻 1 号 p.
44-49
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
腹腔鏡下手術は低侵襲の手術で,胃・大腸癌に対して多くの施設で安全に施行されている.従来の開腹術と比べて胃癌や大腸癌において同等の長期成績が報告されている.しかし胃・結腸重複癌に対する腹腔鏡下手術の症例数および報告も少ないため十分な検討はされていない.症例は76歳,女性,心窩部痛を主訴に上部内視鏡を施行.胃体下部から前庭部後壁に腫瘍を認め,低分化型腺癌の診断.下部消化管検査にてS状結腸にType2病変あり,中分化腺癌の診断を得た.腹腔鏡補助下に幽門側胃切除D2とS状結腸切除D2を施行.術後経過は良好で術後15日で退院した.手術時間は6時間5分と長時間であったが,出血量は180mlと少なく腹腔鏡手術の低侵襲性が示唆された.今回胃癌とS状結腸癌の重複癌の腹腔鏡手術に際して,手術の順番,ポートの位置,小開腹創の位置,術者の交代,手術適応,手術時間など留意すべき点が明らかになり検討したので報告する.
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中瀬古 裕一, 矢野 文章, 小村 伸朗, 坪井 一人, 岡本 友好, 矢永 勝彦
2015 年 40 巻 1 号 p.
50-54
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は61歳男性.30歳時に十二指腸潰瘍を指摘された.60歳時には十二指腸潰瘍穿孔性腹膜炎の診断にて,開腹下穿孔部閉鎖,大網被覆,腹腔ドレナージ術を当院にて施行した.退院後,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服にて経過観察していたが,PPIを中止した術後22カ月後に,十二指腸潰瘍再発,幽門狭窄により頻回の嘔吐を認め,固形物の経口摂取が不可能になった.PPI内服後も幽門狭窄が残存したため,腹腔鏡補助下選択的近位迷走神経切離,幽門形成術を施行した.術後固形物の経口摂取が可能となり,同術式は潰瘍の根治ならびに幽門狭窄に対しても著効した.
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目黒 由行, 細谷 好則, 遠藤 和洋, 田中 亨, 佐田 尚宏, 安田 是和
2015 年 40 巻 1 号 p.
55-60
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
患者は25年前胃癌で胃全摘,膵体尾部切除,脾摘出術を施行された62歳男性.腹痛で近医を受診,腹部CTで輸入脚の拡張を認めたため当科紹介受診.ダブルバルーン内視鏡,FDG-PETでの精査の結果,Y脚近傍に生じた悪性腫瘍による腸重積と診断した.また,ネフローゼ症候群と低栄養による著明な低蛋白血症も認められた.腸重積は内視鏡施行時に解除されたため,待機的手術とした.開腹時,腫瘍はTreitz靭帯から20cm遠位に存在し,腫瘍からY脚吻合部までの距離は30cmであった.腫瘍から10cmのマージンを確保し切除,linear staplerでfunctional end-to-end anastomosisを施行した.術後も著明な低蛋白血症は改善せず術後3カ月で前医転院となった.術後病理は小腸腺癌であった.胃全摘術後輸入脚に生じた小腸癌による腸重積という稀な病態は報告例がなく,文献的考察を加えて報告する.
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松本 聖, 稲田 涼, 近藤 喜太, 渡邉 彩子, 八木 朝彦, 戸嶋 俊明, 母里 淑子, 岸本 浩行, 永坂 岳司, 藤原 俊義
2015 年 40 巻 1 号 p.
61-65
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は60代男性.下腹部痛を主訴に前医受診した.腹部CT検査にてS状結腸近傍に腹腔内膿瘍を指摘され,抗生剤にて加療し退院となる.6カ月後に同様の症状が出現し前医再受診.精査加療目的で当院紹介となった.大腸内視鏡検査ではS状結腸に壁外性の圧排による隆起を認めた.また小腸内視鏡検査では回腸末端から約10cm口側に屈曲を伴う肉芽様病変を認め,生検するも悪性細胞は認めなかった.カプセル内視鏡検査では同部位付近での通過障害を認めたが,隆起性病変は撮影されなかった.S状結腸憩室穿孔に伴う腹腔内膿瘍を疑い,診断的治療目的で手術施行した.回腸病変部は直腸に固着し,周囲に腫大リンパ節を認め小腸癌と診断したため,右半結腸切除,空腸・直腸合併切除,リンパ節郭清を施行した.組織学的には高分化腺癌であった.現在術後9カ月経過するも無再発生存中である.近年小腸癌の診断に小腸内視鏡検査が有効とされているが,今回われわれは小腸内視鏡検査を行っても術前診断を得ることの出来なかった原発性小腸癌を経験したので報告する.
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柳 舜仁, 佐々木 敏行, 佐々木 優至, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
2015 年 40 巻 1 号 p.
66-69
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は62歳男性,右下腹部痛を主訴に来院した.体温は38℃と発熱を認め,右下腹部に限局する圧痛・反跳痛を認めた.CT検査にて,小腸周囲の脂肪織混濁と腸管外ガス像を認め,小腸穿孔の診断で緊急手術を行った.開腹すると混濁した腹水を認めた.小腸には全長にわたり憩室が散在し,特にTreiz近くの上位空腸と回腸末端近傍に多く認められた.回腸末端より約50cm口側の小腸で,憩室に白苔付着,発赤を認めた.周囲腸間膜も発赤しており,腸間膜への穿通と診断し,同部位の小腸を20cm切除した.摘出標本の肉眼所見では切除した回腸に憩室を認めた.病理組織学的所見では筋層を貫く仮性憩室が漿膜に達し,炎症細胞が漿膜に達していた.術後経過は良好で第14病日に退院となった.今回われわれは,回腸憩室穿通による腸間膜炎を引き起こし,緊急手術を要した稀な1例を経験したので報告した.
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樫塚 久記, 櫻井 隆久
2015 年 40 巻 1 号 p.
70-74
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
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症例は29歳の女性で,腹痛を主訴に当科を受診した.最近3年間で腸閉塞のため5回の入院加療を受けており保存的加療で軽快していた.他院でのカプセル内視鏡検査では異常を認めなかった.腹部造影CTで腸管が同心円状に重複するtarget signと先進部に囊胞性病変を認め,小腸腫瘍による腸重積と診断,単孔式腹腔鏡手術を施行した.重積部より肛門側の腸管を把持して腹腔外に露出させてHutchinson手技にて整復すると30mm大の粘膜下腫瘍を認め,小腸部分切除術を施行した.病理組織学的検査所見ではHeinrich分類のⅢ型の小腸異所性膵であった.今回,小腸異所性膵による腸重積症は比較的稀であり,単孔式腹腔鏡下手術で安全に手術可能であったので文献的考察を加え報告する.
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國重 智裕, 樫塚 久記, 鎌田 喜代志, 鶴井 裕和, 小川 護仁, 中出 裕士, 辰巳 満俊
2015 年 40 巻 1 号 p.
75-80
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は44歳の女性.2011年12月末頃より心窩部痛を認めていたが放置し腹痛が持続・悪化したため,2012年2月近医を受診した.腹部造影CTで上行結腸の壁肥厚像を指摘され,精査目的に当科に紹介となった.上行結腸に重積像および先進部に脂肪濃度を呈する腫瘤を認め,脂肪腫による腸重積症と診断した.注腸造影検査・下部消化管内視鏡検査を行ったところ,上行結腸内に約10cmの小腸の陥入を認め血流障害も否定できなかったため,腹腔鏡下に緊急手術を施行した.腹腔内を観察すると,腸間膜の肥厚および線維性の癒着を認め整復困難と判断,安全性を優先するため開腹手術へ移行し回盲部切除術を施行した.先進部の腫瘤は脂肪腫であり,陥入腸管には壊死は認めなかった.脂肪腫による成人腸重積症は比較的稀であり,近年の画像診断の進歩・腹腔鏡手術の普及により手術時期・術式選択に苦渋することがあり,若干の文献的考察を加え報告する.
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藤川 善子, 青山 徹, 林 勉, 藤川 寛人, 沼田 正勝, 山田 貴允, 和田 博雄, 木谷 勇一, 小澤 幸弘, 佐藤 勉, 山本 直 ...
2015 年 40 巻 1 号 p.
81-84
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
腸重積症は小児に多く認められ,成人では比較的稀な疾患とされている.われわれは,異所性胃粘膜を伴わないMeckel憩室が内翻して腫瘤を形成し腸重積を発症した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は44歳,女性.手術歴に2回の帝王切開があるが,家族歴・既往歴に特記事項はない.2013年12月上旬ごろから間欠的腹痛が出現した.2013年12月10日夜より持続的な腹痛となったため,12月11日当院内科を受診した.腹部所見で右下腹部に圧痛を伴う腫瘤を触知.腹部単純写真で腸閉塞像を認め,CT・超音波検査で腸重積と診断,手術目的に外科紹介となった.開腹所見では回盲部から上行結腸肝彎曲付近まで上行結腸の拡張および腸管に4cm程度の腫瘤を触知した.Hutchinson手技で重積を整復したところ,回盲部から50cm口側の部位に直径4cm程度の腫瘤を認め,小腸の部分切除を施行した.腫瘤を検索するとMeckel憩室が内翻していた.このため,本症例では内翻したMeckel憩室が先進部となり腸重積をきたし,腸閉塞に至ったと考えられた.術後は合併症なく軽快退院した.また,病理組織検査では異所性組織はなく悪性像も認められなかった.
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眞鍋 恵理子, 加藤 俊二, 安東 克征, 松本 智司, 樋口 勝美, 髙田 英志, 内藤 善哉, 内田 英二
2015 年 40 巻 1 号 p.
85-90
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
大腸癌が壁外性に発育し皮下膿瘍を形成する症例は稀である.今回われわれは通過障害を伴わずに皮下膿瘍を形成したS状結腸癌の症例を経験したので報告する.症例は74歳,女性.以前から左下腹部に腫瘤を自覚し,その直上の皮膚に発赤と膨隆を認め,中心部の皮膚に壊死・潰瘍を認めた.腹部CT検査では骨盤内の腫瘤と連続する皮下膿瘍を認めた.大腸内視鏡検査ではS状結腸下行結腸移行部近傍のS状結腸に全周性の狭窄を認め,内視鏡は通過できなかった.生検でGroup 5,腺癌の結果であった.皮膚膿瘍の切開排膿後68日目にS状結腸切除(D3)および浸潤のみられた腹壁と皮膚の合併切除を施行した.病理組織学的には,腫瘍は漿膜を超えて腹横筋近傍まで浸潤,周囲に膿瘍形成が確認されたが,術後10カ月の現在再発なく経過している.
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大森 隼人, 岸本 浩史, 山ノ井 一裕, 高橋 祐輔, 吉福 清二郎, 笹原 孝太郎, 小田切 範晃
2015 年 40 巻 1 号 p.
91-95
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
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フリー
胃癌術後2年5カ月して虫垂炎を契機に虫垂転移が明らかになった症例を経験した.症例は81歳男性.H21年7月に胃癌に対して幽門側胃切除を施行した.病理組織診断はtype5 T4a tub2-por ly1 v3 N2 M0 P0 H0 Stage ⅢBであった.TS-1(100mg/日)による補助化学療法を導入したが,口内炎,下痢の副作用があり,1クール目で中止となった.外来で術後2年目のH23年7月までCEA,CA19-9の上昇はなく,腹部造影CTで再発の所見がないことが確認されていた.H23年12月,右下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診.腹部造影CTで虫垂炎と診断し同日緊急手術を行った.腫大した虫垂の根部に母指頭大の硬結を触知,後腹膜と固着していた.腫瘍性病変が疑われたため回盲部切除を施行した.組織学的には既往の胃癌と類似した構築を呈する腺癌を認めた.免疫染色では双方とも,CK7(+),CK20(-),p53(+),HER-2(-)と結果が一致したことから,胃癌の虫垂転移と診断した.H26年2月無再発生存中である.
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呉林 秀崇, 五井 孝憲, 成瀬 貴之, 澤井 利次, 森川 充洋, 山口 明夫
2015 年 40 巻 1 号 p.
96-101
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
稀な大腸原発内分泌細胞癌の2手術例を経験したので報告する.症例1は49歳,男性.直腸S状部癌の診断にて,直腸高位前方切除術(D3),播種巣切除を施行した.病理診断にて内分泌細胞癌と診断し,RS-S,2型,SE,N3,H1(S4b),P1,M1(遠隔リンパ節)Stage Ⅳであった.術後FOLFOX療法を行ったが,術後5カ月で癌性腹膜炎にて永眠した.症例2は91歳,女性.上行結腸癌の診断で右半結腸切除術(D3)を施行した.組織診にて内分泌細胞癌と診断し,A,SE,N1,H0,P0,M0,Stgae Ⅲaであった.高齢であり術後補助化学療法は施行しなかったが,再発を認めず,術後11カ月で誤嚥にて窒息死した.大腸内分泌細胞癌は浸潤性が高く,根治的な手術加療が肝要であり,進行例では分子標的薬を含め,化学療法の検討が必要と思われた.
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石多 猛志, 大石 英人, 飯野 高之, 佐藤 拓也, 濱野 美枝, 中村 努, 新井田 達雄
2015 年 40 巻 1 号 p.
102-106
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は75歳女性.普段より便秘気味で5日間の無排便期間の後に大量の排便を認めた後に下血を生じたため当院救急外来受診となった.診察時臍周囲の軽度圧痛を認めるも,腹膜刺激症状なく腹部レントゲンにても特に所見を認めなかった.しかし腹部造影CT(computer tomography)にて直腸(Rb)背側に巨大な穿孔部認め緊急手術となった.開腹時腹腔内に汚染認めず,穿孔部も認めなかった.S状結腸にて人工肛門造設し,穿孔部が巨大なため経肛門的に直腸内ドレーン留置の方針となった.術後画像検査にても穿孔部から周囲への炎症の広がりを認めなかった,術後11日目に直腸内ドレーン抜去して術後17日目に退院となった.直腸穿孔は稀な疾患であり,緊急手術にてHartmann手術もしくは,穿孔部単純閉鎖後人工肛門造設を行うことが多い.直腸穿孔に対して人工肛門造設行い,経肛門的直腸ドレーンにて症状軽快した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
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田中 希世, 浅岡 忠史, 宮本 敦史, 山本 和義, 原口 直紹, 三宅 正和, 西川 和宏, 平尾 素宏, 池田 正孝, 中森 正二, ...
2015 年 40 巻 1 号 p.
107-110
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は36歳,女性.右鼡径部に圧痛を伴う弾性軟の3cm大の腫瘤を認め,当科紹介となった.腫瘤は腹圧で変化なく,圧迫にても還納されず,腹部単純CTでは囊胞状を示した.外鼡径ヘルニアおよびNuck管水腫の診断で手術を行った.手術は前方アプローチで行い,水腫を破損や遺残のないよう完全摘出し,鼠径ヘルニアはMarcy法で修復した.病理学的所見では,摘出された多房性囊胞は中皮由来で,上皮直下に内膜間質様細胞を認め,子宮内膜症の組織像を伴っていたことから子宮内膜症を伴ったNuck管水腫と診断した.
成人女性のNuck管水腫では,稀に子宮内膜症を伴うことがあり,ヘルニアの根治性に加えて遺残なく水腫を摘出することが重要と思われた.
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八木 朝彦, 稲田 涼, 永坂 岳司, 渡邉 彩子, 松本 聖, 戸嶋 俊明, 母里 淑子, 近藤 喜太, 岸本 浩行, 藤原 俊義
2015 年 40 巻 1 号 p.
111-115
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は60代女性.2009年右腎細胞癌に対して右腎部分切除術を施行.2012年フォローアップのCT検査にて上行結腸近傍に結節性病変を指摘され,精査加療目的で当科紹介となった.PET-CT検査では,同部位に異常集積を認め,下部消化管内視鏡検査では,上行結腸になだらかな隆起を伴う粘膜下腫瘍様病変を認めた.術前診断としてGIST,腸間膜腫瘍,腸間膜脂肪織炎,腎細胞癌再発などを疑い,診断的治療目的で腹腔鏡下上行結腸切除術を施行.術後病理診断にて腫瘍内に繊維芽細胞と膠原繊維の増殖を認め,免疫染色にてc-kit,Desmin,CD34,S-100陰性となり,デスモイド腫瘍と診断.切除断端は陰性であった.術後大きな合併症なく第9病日で退院.現在切除後13カ月経過したが再発はなく生存中である.今回われわれは頻度の低い腹腔内デスモイド腫瘍に対して腹腔鏡下に治癒切除を施行した症例を経験したので報告する.
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三宅 謙太郎, 舛井 秀宣, 茂垣 雅俊, 津浦 幸夫, 長堀 薫
2015 年 40 巻 1 号 p.
116-121
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は67歳男性.急性胆囊炎に対して腹腔鏡下胆囊摘出術を施行し,その際胆囊壁を損傷し腹腔内に小結石が落下したため可能な限り回収した.半年後の造影MRI検査で肝右葉辺縁にT1,T2共に内部に淡いhigh intensity areaが混在した38mm大の腫瘤を認めた.肉芽腫やSFT,血腫などの良性病変を疑い経過観察としたが,さらに半年後のMRI検査では52mm大と増大傾向にあることから悪性腫瘍の可能性も考慮し手術加療の方針とした.腫瘤は右横隔膜下にあり,肝臓,横隔膜との境界が不明瞭であったため腫瘤とともに横隔膜,肝臓を合併切除した.病理組織学的検査では悪性所見は認めず,腹腔内落下結石を核とした右横隔膜下肉芽腫の診断であった.腹腔内落下結石を核とした腹腔内肉芽腫を形成した稀な1例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
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田代 良彦, 宗像 慎也, 杉本 起一, 栁沼 行宏, 小島 豊, 五藤 倫敏, 今西 俊介, 北出 真理, 八尾 隆史, 坂本 一博
2015 年 40 巻 1 号 p.
122-127
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
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症例は34歳,女性.開腹歴はなく,30歳時に子宮内膜症の診断を受けたことがあった.腹痛を主訴に前医を受診し,腸閉塞の診断で入院となり,イレウス管による保存的治療が施行された.小腸造影検査で回腸末端に狭窄像を認め,骨盤MRI検査では腸管子宮内膜症による小腸狭窄が強く疑われた.腸閉塞症状が軽快した後,精査加療目的で当院に紹介となった.回腸子宮内膜症に対してホルモン療法後に,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると後膣円蓋と直腸前壁に子宮内膜症による軽度の癒着を認めた.また,回腸末端部より約20cmの回腸に漿膜の引きつれと硬化を認め,小腸部分切除術を施行した.病理組織検査では,狭窄を認めた回腸の粘膜下層から漿膜下層に子宮内膜腺および間質細胞が分布しており,回腸子宮内膜症と診断した.術後経過は良好で第9病日に退院となった.
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兼松 昌子, 長田 真二, 森 龍太郎, 今井 寿, 佐々木 義之, 森光 華澄, 名和 正人, 二村 学, 吉田 和弘
2015 年 40 巻 1 号 p.
128-132
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
フリー
症例は53歳女性,既往に右乳癌.食欲不振や嘔吐の精査にて十二指腸狭窄と高アミラーゼ血症を認め,急性膵炎の治療でいったんは改善したが,数カ月後にイレウスが再燃し試験開腹術を施行した.後腹膜に広範囲な硬化を認め,生検にて浸潤性小葉癌(Invasive lobular carcinoma:ILC)の再発と診断された.胃空腸バイパス術にて経口摂取が可能となったことから経口ホルモン薬投与を開始にて著明に奏効し,再発後5年間の無増悪期間を得た.乳癌特殊型の一つであるILCはその特殊な転移形式として腹膜・後腹膜,子宮,卵巣,消化管に転移することもあり,晩期再発が多い傾向にあることが報告されている.一方でホルモン受容体陽性率が高いことからホルモン療法が有効である場合が多く,再発時にも外科切除を含めた生検の機会があれば積極的に行うことが推奨された.ILCの予後や治療反応性につき,若干の文献的考察を加え報告する.
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中谷 晃典, 北島 政幸, 大久保 悟志, 岸根 健二, 佐藤 剛, 内藤 滋俊, 吉野 耕平, 渡部 智雄, 落合 匠, 西村 和彦
2015 年 40 巻 1 号 p.
133-138
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
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腹膜原発乳頭状漿液性腺癌は卵巣乳頭状漿液性腺癌に類似した組織像を示す稀な疾患である.画像上は明らかな腫瘤を認めないことが多く術前診断は困難で,治療方針決定に腹腔鏡検査が有用と考える.症例は78歳,女性.体重減少,腹部違和感を主訴に当院紹介受診.腹部CTでは肥厚した大網と少量の腹水を認めた.骨盤部MRIでも肥厚した腹膜を認め,大網や骨盤辺縁部に腹膜播種が疑われたが,卵巣および他臓器に病変を指摘できなかった.上下部消化管検索でも病変は認められず,腹膜原発の腫瘍も疑い腹腔鏡下生検を施行することとした.術中大網は一塊となり腫瘤状を呈しており,超音波凝固切開装置にて生検を施行した.術後合併症はなく,病理組織検査の結果,漿液性腺癌と診断され化学療法施行後に腹式大網切除術+両側付属器摘出術を施行し,現在も生存中である.今回腹腔鏡下生検にて診断しえた腹膜原発漿液性腺癌の1例を経験したので報告する.
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山本 直人, 利野 靖, 長谷川 慎一, 菅沼 伸康, 郷田 素彦, 玉川 洋, 佐藤 勉, 湯川 寛夫, 益田 宗孝
2015 年 40 巻 1 号 p.
139-143
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
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回腸導管傍ストーマヘルニアと腹壁瘢痕ヘルニアの合併例に対し腹腔鏡下にメッシュ修復を行ったので文献的考察を加えて報告する.症例は70代女性で,膀胱癌で膀胱全摘・回腸導管造設手術の既往あり.手術の半年後よりストーマ周囲の膨隆が出現し,腹部CTにより傍ストーマヘルニアと診断された.症状によるADL低下を伴うため腹腔鏡下での手術を施行した.ストーマ腸管の頭側亜全周に三日月形のヘルニア門を認め,大網と横行結腸が脱出していた.脱出腸管を還納,ヘルニア門に対し,まずKeyhole型のメッシュを腹壁にタッキング固定,さらに挙上腸管を後腹膜化するようにCenterband型のメッシュで追加被覆した.さらに本手術では同時に認められた臍部の瘢痕ヘルニアに対してもポート追加なくメッシュ修復しえた.術後12カ月経過したが,ヘルニアの再発は認められず,ストーマ関連合併症の発生も認めていない.
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Hiromichi Sonoda, Hiroyuki Morishita, Yasuhiro Shioaki, Hiroyuki Kimur ...
2015 年 40 巻 1 号 p.
144-147
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
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Stomal varices represent a rare and serious complication among patients with portal hypertension and external enteric diversion. These varices often cause severe anemia due to recurrent bleeding. We successfully treated stomal varices using a transjugular intrahepatic portosystemic shunt (TIPS) and endovascular repair for post-procedural hepatic encephalopathy with a stent-in-stent technique.
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秋元 俊亮, 矢野 文章, 志田 敦男, 小村 伸朗, 矢永 勝彦
2015 年 40 巻 1 号 p.
148-153
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
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患者は20歳代,男性.右下腹部痛で近医受診後,症状の改善がなく当院消化器内科を受診した.右
下腹部圧痛と血液検査上炎症反応上昇を認め,さらに腹部単純CT検査で右側腹部脂肪織混濁を認め
たことから,急性腹膜炎の診断で入院となった.絶食にて補液と抗生物質の点滴治療を行った.入院
後第3病日より右側腹部痛が増悪し,筋性防御と反跳痛が出現した.炎症所見は上昇し,腹部造影CT
検査で大網捻転と大網梗塞を疑い手術を施行した.大網の一部が腹壁に癒着して結節状腫瘤を形成し
ており,大網捻転の確診に至った.手術は結節状となった腫瘤を含めた大網部分切除を施行した.手
術時間は97分で出血量は少量であった.術後第3病日に食事再開し,第7病日に軽快退院となった.
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藤田 俊広, 八代 享, 曽我 直弘
2015 年 40 巻 1 号 p.
154-157
発行日: 2015年
公開日: 2016/02/29
ジャーナル
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1897年に僧帽弁狭窄症に伴い左反回神経麻痺による嗄声を呈した2例をOrtnerが報告し,Ortner症候群と呼ばれるようになった.エコーが診断に有用であったOrtner症候群の1例を経験したため報告する.症例は83歳,女性.胸痛を認め胸部CT検査で胸部大動脈瘤切迫破裂と診断され入院となった.安静加療にて症状は消失した.嗄声を認め体表エコーを施行したところ左声帯が固定しており,喉頭ファイバーでも同様であった.大動脈瘤の増大に伴い左声帯麻痺が出現し,他の病因は否定的であることからOrtner症候群と診断した.メコバラミンの投与を開始し1カ月後に体表エコーで再評価したが改善はなかった.3カ月後に大動脈瘤破裂により永眠された.体表用プローベを使用すると声帯は高エコーの弁として描出され,声帯麻痺症例では固定し動きがない.体表エコーは簡便で苦痛を伴わない利点があり声帯の評価に有用と考えられた.
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