抄録
【目的】直腸癌の括約筋温存手術における,closed suction drainの縫合不全に対する意義について後方視的に検討した.さらに,縫合不全の危険因子についても検討した.【対象・方法】直腸癌に対する括約筋温存手術において,仙骨前面にclosed suction drainを留置した連続151例を対象.縫合不全の頻度,治療,ドレーン排液量の推移,縫合不全の危険因子について検討した.縫合不全の分類はInternational Study Group of Rectal Cancer(ISREC)groupのGrade分類に従った.
【結果】縫合不全は6例(4.0%)に認めた.縫合不全のGradeはA 3例,B 1例,C 2例であった.縫合不全の部位が吻合部後壁の3例ではすべてGrade A,側端吻合の口側大腸断端の1例ではGrade B,吻合部前壁の2例ではいずれもGrade Cであった.ドレーン排液量は,縫合不全症例の方が,非縫合不全症例より第1病日までの排液量が多かった(p=0.04)が,第2病日,第3病日の排液量に差はなかった.縫合不全の危険因子について,ロジスティック回帰分析を行ったところ,単変量解析では側方郭清施行(p<0.01),ドレーン抜去日6日目以降(p=0.06)が選択され,多変量解析では側方郭清(p=0.04)のみが縫合不全の危険因子として同定された.
【結語】直腸癌に対する括約筋温存手術においてclosed suction drainは,縫合不全発生率とのバランスから考えれば有用性は限定的である.