2015 年 40 巻 6 号 p. 1096-1100
症例は49歳男性で,22歳時に十二指腸潰瘍に対し幽門側胃切除術,BillrothⅡ法再建の既往がある.9カ月前に吻合部潰瘍のため他院で保存的治療を行った.同時期より下痢,低アルブミン血症を認めていたが,2カ月前より下腿浮腫,全身倦怠感が生じ,精査目的で入院となった.下部消化管内視鏡検査,上部消化管内視鏡検査,上部消化管造影検査で胃空腸吻合部と横行結腸との交通が確認され,吻合部潰瘍による胃空腸結腸瘻と診断し,瘻孔部を含む胃空腸部分切除,横行結腸部分切除,Roux-en-Y再建を行った.術後,吻合部潰瘍の再発を認めたが保存的治療で改善し,術後9カ月の現在,再発を認めていない.
吻合部潰瘍による胃空腸結腸瘻は比較的稀であるが,胃切除後に下痢や低アルブミン血症を示す場合には本症も鑑別に挙げる必要がある.本症は再発のリスクも高く,術式選択や術直後からのプロトンポンプ阻害剤投与が重要である.