2015 年 40 巻 6 号 p. 1101-1106
症例は60歳,女性.検診の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸球部上壁に35mm大腺腫を認めた.半年毎に内視鏡フォローされたが,形態,大きさに変化なかった.10年後生検でGroup5検出され,外科的切除の方針となった.M癌だったため,膵頭十二指腸切除術を回避し根治性を確保した十二指腸部分切除術を選択した.比較的広範囲な十二指腸の切除を必要としたが,術中内視鏡を用いることにより,病変位置を正確にマーキングし,過不足なく病変を切除することが可能であった.さらに術中内視鏡で吻合部を観察し,出血や狭窄,腫瘍の遺残がないことを確認した.病理組織所見では60×50mmの十二指腸壁が切除され,腺腫内に上皮内癌を認めた.術後膵液漏や縫合不全,通過障害を認めなかった.術中内視鏡を併用した十二指腸部分切除術は,転移のリスクが低く,膵癒着部対側の十二指腸粘膜癌に対し,過不足ない切除が可能で,根治性と安全性,低侵襲性を確保する治療として有用であると考えられた.